
名曲解説事典として、推薦レコード(CD)も併せて載せている本もあるが、この本はこの種の解説本としては、やや趣きを異にしている。
選定した名曲を、何人かの評論家が分担して解説しているが、かなりの数の録音を聴いた上で、しかもスコアを原点版から現在出版されているものとの違い、またそれらを指揮者がどう採用し、どう解釈しているか憶測を含めて解説している。
憶測となる部分は、作曲家はもちろん、指揮者の多くは他界しているので確固たる根拠のないものもあるのでしかたがないが、なるほどと思わせるものがある。
さすが、評論を職業にしているだけのことはあると感じさせる。
それぞれの評論家が、自分の解説した曲について推薦盤を3枚挙げている。
それらを見て、自分のライブラリーと比較してみると、一致しているものもあるしそうでないものもある。
それは特に大したことではないが、推薦の根拠を読むと、自分の観点と違ってそれもまた参考になる。
概して、自分が一番始めに手に入れたレコードやCDには思い入れがあって、自分としてはベストレコードにしてしまう傾向があるのかなとしばしば考えることもある。
しかし、やっぱりそうなんだというものもあって、考えが一致すると嬉しいような気もする。
それらを逐一説明する余裕もないが、一例として挙げるなら、ストラヴィンスキーの「春の祭典」はずいぶんたくさんの録音があるにも関わらず、1969年録音のブーレース指揮、クリーヴランド管弦楽団のレコードがベストだと思ってきた。
録音技術も進歩し、レコードのダイナミックレンジをはるかに超えるCDを持ってしても、演奏の緊張感、切れ、迫力が古いレコードの方が優って聴こえるのは不思議だ。
ブーレーズは23年後(1992年)に、同じオーケストラで、デジタル録音(CD) しているのだが、それでもレコードの方に、私も軍配をあげる。
もっとも、他の評論ではデジタル録音のCDの方をベストにしているものもある。
これからライブラリーを増やそうとする人、すでにたくさんのライブラリーを持っている人、ともにこの本を読みながら参考にすると、よりクラシックに精通する一助になるものと思う。




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