
中学生のころは吹奏楽部にいて、マーチをよく演奏した。
そのせいで、マーチには関心が強かった。
しかし、いつしかドキッとする音楽が聴こえてきた。
それが、シューベルトの未完成交響曲だった。
これが、私のクラシック入門と言えるのかもしれない。
音楽をたくさん聴きたいがために、ラジオを作った。
レコードは買えないから、音源はもっぱら放送だった。
作ったのはほとんどが真空管回路だったから、真空管の音にはずいぶん親しんできた。
真空管の音が聴きたいわけではなく、選択肢が真空管しかなかったたという事情である。
この辺が、現在のちょっとした真空管ブームとは違う。
私が関心があるのは、真空管の音ではなく音楽そのものである。
だから、真空管のアンプはいい音がしますよと言われても、それはちょっと違うのである。
昔は出力管と言えば、古くは6Z-P1とか5Z3で、これらはST菅である。
MT菅になって、6AR5とか6BM8が出てきた。
その上を行く高級路線としては6BQ5になった。
6BQ5のPP(プッシュプル)を初めて聴いたときは驚いた。
迫力とレンジの広さである。
出力トランスは山水であった。
これは、当時としては高級路線だった。
その後、トランジスタアンプが進化し、真空管のパワーを軽く上回るようになると、すっかり事情は変わった。
一番の驚きはパワーより、低域も高域もストレスなく伸びきった音だ。
真空管アンプに戻って聴いてみると、あれほど凄いと思っていたアンプも低音や高音は寸詰まりに聴こえる。
私はアンプを聴きたいのではなく、音楽を聴きたいのだ。
特に音楽も仕事の一部として、楽譜をよく読むようになると、スコアを想像するクセがつき、パートの動きがよくわかる装置、別の言い方をすればスコアが読めるような装置がいいということである。
こういう事情で、私はいわゆるオーディオマニアの仲間ではないと思うのだが。



