昔はボンボンとかドンドンという低音(?)に憧れていた時代がありました。
しかし、オーディオ歴が長くなるにつれ「なんだか変だぞ」という気持ちになってきました。
それは「実際、演奏でそんな音が出ているの?」という疑問が湧いてきたからです。
いくら低音が好きと言っても、実際に存在しない音が聴こえてくるのは邪魔なのです。
音楽を聴く上では、邪魔です。
つまり、オーディオへの関心とともに、音楽を聴く方向が強くなっていったのだと思います。
ある高級車を買った人が、カーオーディオに不満を抱いていました。
「低音が出ない」という不満でした。
その車のオーディオのブランドは「マーク・レビンソン」でした。
マーク・レビンソンの名前だけ車のメーカーが買ったのかも知れませんが、それでもその名前を入れるにあたっては、マーク・レビンソンが全く関与していないということはないでしょう。
そうすると、それは「ない音は出さない」という方向であると想像できます。
某高級オーディオ店で偶然、耳に入っていた話ですが、年の頃20代の男の人が、店員に「Accuphase・・・全然おもしろくない」と言っていました。
Accuphaseにおもしろさを期待するのは疑問です。
だって、Accuphaseは創業以来の会社のポリシーが、春日社長の言う「アンプは太い導線でなければいけない」なわけですから。
Accuphaseのアンプは何も足さない、何も引かないというアンプで、忠実に信号を増幅することを目標にしているわけですから、アンプを通すことにより何かおもしろい音が出てくると期待する方が間違っているでしょう。
Accuphaseに変えたら低音が出なくなったと嘆く人がいるかも知れません。
それに、今日の高級スピーカーをつないだら、ますます低音が出ないと感じるでしょうね。
■ウーファーの難しさ純粋な低音を再生するのはかなり難しいことだと思います。
多くの人は低音でないものを低音と思って聴いているフシがあります。
例えば、コントラバスの音ですが、低音と言っても多くはその倍音や高調波を聴いているのだと想像されます。
だから、コントラバスを生々しく再生するにはスーパートゥイーターもあった方がよいのです。
四弦のコントラバスの最低音は40Hzです。

しかし、この音を弾いても40Hzの正弦波だけが聴こえるわけではありません。
オシロスコープを通して見るとわかりますが、基音である40Hzの正弦波に細かくギザギザに見える波形が含まれていることがわかります。(写真のオシロスコープは、
フリー百科事典「ウィキペディア」より)
倍音と倍音ではない周波数の音が混じって、コントラバスの音色を作っているわけです。
40Hzの音はコントラバスの最低音であることからわかるように、大変低い音です。
このような低い音は振幅も大きいので、エネルギーが必要です。
アンプもパワーが必要だということですが、今日のアンプでは必要なパワーを出すことは難しいことではありません。

問題は、その大きなエネルギーで揺れたスピーカーのコーンを止める時です。
大きな車体の車は動かすときにもエネルギーが必要ですが、止めようとする時は惰性でなかなかすぐには止められないのと同じです。
つまり、実際に音はないのに動いているのは、スピーカーでは余計な音を出していることになります。
右の図にその様子を表します。
入力信号は、瞬間的なものでも、一度揺れたコーンはなかなか止まりません。
大きなスピーカー(ウーファー)は、重いので惰性で動く分が多いのです。
それで、再生波形は下の図のようになってしまいます。
このことをもう少し詳しく説明したのが、下の図です。
オーディオは時代とともに、原音を忠実に再生しようという方向がより強くなり、録音にない音を出さないようになってきています。
(スピーカーを小型化しているのも、スピーカーの余計な振動を止めやすくするためとも言えます)
高級路線がそうであると言えます。
あの、箱を鳴らしていたタンノイでさえ方向は転換しています。
高級オーディオショーで紹介された、タンノイの
TANNOY KINGDOM ROYALは新しい行き方のタンノイです。
しかし、オーディオ使って、体が揺れるような原音にはない低音を好む人を否定するものではありません。
それは、個人の好みですから。
気をつけることは、誰それがいいと言ったとしても、その好みに注意しないと、自分には合わないかも知れないということです。


