
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
LONDON SLC6103
ホルスト/組曲「惑星」で、私が一番好きな録音は、カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のCD1981(レコード)である。
だが、カラヤンがウィーンフィルを指揮した演奏はどうなのだろうか?
録音がLONDONということにも興味がある。
レコードを手に入れて聴いてみた。
1973年のレコードだが、非常にきれいだった。
始めの火星から聴き始めると、速いなと感じた。
全体に速いのではなく、加速感がベルリンフィルの時の演奏より大きいのだ。
カラヤンの演奏は、あたかもスポーツカーで飛ばしてゆくように、オーケストラを煽り立てることがある。
ベートーベンの交響曲第5番でもそういう傾向があって、そこがカラヤンのベートーベンを好まない私の理由である。
火星では、クライマックスに向かって加速していく感じは悪くない、だが、その加速感がベルリンフィルの時の方が自然に感じる。
録音は、すごくよくて、火星ではティンパニー奏者が二人という効果がよくで出ている。
ティンパニーの打音の後の皮の余韻が、アンサンブルの音色作りに効果的である。
第一曲目の火星で、加速しているなと感じたので、ベルリンフィルの時の演奏時間と比較してみた。
(前がベルリンフィル、後ろがウィーンフィル)
@火星 7:14 6:58
A金星 8:34 8:18
B水星 4:11 3:54
C木星 7:27 7:34
D土星 9:20 8:30
E天王星 5:59 5:44
F海王星 8:41 7:15
比べてみると、木星以外はウィーンフィルの方がテンポが速いことがわかる。
火星が速いなあと思ったら、土星と海王星はさらに速い感じだ。
とは言え、どちらもやはりカラヤンという感じはするが、オーケストラの性格の違いは出ている。
ベルリンフィルの方は一刀両断という感じに対して、ウィーンフィルはやや表情を持って突入という感じだ。
ウィーンフィルでは、土星や海王星の静かな部分の演奏が、何とも言えない寂寞感、孤独感を感じさせる。
演奏は強奏部分のみが説得力があるのではないと感じさせる演奏だ。
日本の吹奏楽コンクールも、弱奏部分で説得力のある演奏をしてもらいたいものだ。
土星や海王星はウィーンフィルの方が、かなり演奏時間が短いにもかかわらず、テンポが速いという感じを全くさせないのも不思議だ。
これも、音楽の持って行き方、カラヤンのすばらしさだろう。
ベルリン、ウィーンフィルどちらのカラヤンも魅力かある。
やはり、惑星はカラヤンだ。

どちらもLPで聴いているんですが、若々しさと優雅さのウィーン・フィル盤もよし、安定度と貫禄のベルリン・フィル盤もよし、いずれ甲乙つけがたいです。どちらも愛聴盤です。