しかし、真空管アンプの出力はプレートであり、プレートには通常、数百ボルトの直流電圧がかかっています。
その途中にスピーカーを直接繋ぐことはできません(スピーカーは壊れてしまいます)。
これを回路的に解決するためには、ホイートストーンブリッジという回路を使う方法があります。

ABCDは真空管で、図の真ん中にあるようにスピーカーを繋ぎます。
こういうアンプをBTL(Bridged Trans Less)アンプと言います。
私はこの回路を使った真空管アンプを、昔、製作したことがあります。
ずいぶん大がかりなものになってしまいました。
実際、作ってみるとブリッジにかかる電圧のバランスが不安定で、怖くてなかなかスピーカーを繋ぐことができないという笑い話になってしまいました。
バランスをとるのが難しいのは、真空管の内部抵抗が高い、つまりそれだけ真空管アンプは不安定要素を持っているということでもあります。
最近のトランジスタアンプは2台用意して、簡単にBTLアンプを実現できる製品も見られます。
真空管アンプでBTLアンプを実現すれば、真空管そのものの持つ個性的な音を聞くことができます。
周波数特性や位相などをトランスに制限されることもありません。
しかし、BTLはかなり大がかりなものになってしまいますから、それよりトランスに性能のよいもの使うとか、トランスによって積極的に音作りをするという考えもあります。
アンプの音色は、配線材、抵抗、コンデンサなど、どの回路素子を変えても変わります。
それが、アンプ製作者の主張になるとも言えます。
また、低域から高域まで特性のよいトランスを使うとなると、トランスにかける費用は大きくなります。
そういう点では、トランスを使わないトランジスタアンプが有利とも言えます。
