演奏の一ヶ月前に、主催者との打ち合わせがあった。
私:「ピアノは大丈夫ですか?」
主催者:「新しいから大丈夫です」
ここをもっと念を押しておくべきだと、あとで後悔した。
「ピアノは大丈夫ですか?」ではなく「ピアノを調律してください」
と言うべきであった。
本番ではピアノが狂っていた。
だから、伴奏者も不機嫌。
新しいピアノは、弦も新しいから弦が伸びやすく、音が狂いやすい
というのは、音楽に携わる者なら常識のようなものである。
このことは、ホール関係者、主催者も知っておかなければならないことである。
「新しいから大丈夫」
・・・
確かに大抵の機械は新しいものはよいだろう。
しかし、ピアノは車の新車とは違うのだ。
調律しないで演奏を始める弦楽器奏者はいない。
ピアノも演奏会では調律しておくという常識が、行き渡っていないのは問題だ。
演奏環境への配慮を知らない人に、あれこれ言うと煩わしく思われることもある。
あげくのはて、もろに口に出して言うことはないにしても
「それほどの演奏者でもないでしょ?気取らないでよ」
なんて雰囲気になるのも困る。
私はクラリネットだが、要所要所でピアノの音と合わないと、だんだん気が滅入ってくる。
いっそ、音がわからないのなら気にならないかも知れない。
絶対音感を持っていて、しかも耳のよい少年がいて、会場でいざピアノを弾きかけたら
「家と音が違う」
と言って気にしだして、盛り上がらなかったことがあると聞いたことがある。
私はそれほど耳がよいわけではないが、普通の環境程度にしておいていただかないと、やはり気になった身が入らない。

オーナーに聞くと、前にジャズの人たちが演奏したそうで、ずいぶん高く調律したらしいということがわかった。
どうしてそんなにピッチを上げるんだろうと思うことがある。
ピッチが高い方が目立って聞こえるというのは、わからないのではないが、そんなに高くしたいのなら、いっそ移調したらと思う。
ピッチが高いと言えば、ヨーロッパでのことがよく話題になる。
リヒャルト・シュトラウスがカール・ベーム指揮の演奏を聴いたとき
「やあ、ベーム君よかったよ。でもなぜ嬰ハ長調でやるのかね?」
と言ったことがあるそうだ。
ピッチの高いのを皮肉ったのかも知れない。
やたらと高いピッチにはクラリネットは困ります。
だから、私はハイピッチのクラリネットも持っています。
そうしないとつきあえないこともあります。
不思議なのは、吹奏楽がよくA=442でチューニングすることです。
特にこういう冬にあって、ローピッチのクラリネットでやれるんだろうかと思う。











日本は陸軍がフランス、海軍がトイツ式で学んだので楽器も入り乱れてピッチに苦労します。ドイツやオーストリアは高いピッチですねー、でも音質が大人しいから合うのだと思います。ポールのピアノの調律は演奏者側の責任ですからホールに責任は無いと思いますよ?
それで、打ち合わせで市の担当者にピアノの状態をきちんとしておくように要望したことが伝わらなかったということです。
問題は、ホールの担当者が「ピアノは毎回調律すべき」という認識がないことです。
他のホールでは、公演の一ヶ月前までにはホールの担当者と打ち合わせをします。
その時、大抵の係は「ピアノの調律はどうしますか?」と聞いてきます。
それで、ホール専属か、演奏者指定の人にするかを決めます。
「ステインウェイ」は調律の資格があるかどうかホール側が聞いてきます。
私は私的な演奏会では、いつも自分の知り合いの調律師を指定します。