2009年01月10日

真空管アンプは音が良いか?(8)

「音が良いか?」というのは曖昧な表現である。

良いと思うかどうかは個人によって違うからである。
だから良いか悪いかより好きか嫌いかと言った方がよいと思う。

そうすると、真空管の音が良いという人は、真空管の音が好きだということになる

では、真空管の音とはどんな音なのか?

そういう観点でみると、たいていは、真空管のアンプについての批評はマイルドなとか暖かみのあるという表現が出てくる。

真空管の音は本当にマイルドで暖かいのだろうか?
逆にトランジスタの音はマイルドでなく、暖かくないのだろうか?

いや、トランジスタアンプでマイルドで暖かみのある、つまり真空管の音という先入観を持った音を出すことは可能である。

それは、以前にも書いたが、トランジスタアンプにも出力トランスをつければよい。
もちろん、真空管特有の音はある。

例えば、今でも6BQ5という真空管はよく使われるようだが、私はこの真空管を昔よく使った。
6BQ5のプッシュで、あの有名なスピーカー、ダイヤトーンのP-610を鳴らした時は感動した。

しかし、そのころ東芝が独自に6BQ5によく似た6R-P15という真空管を発売した。
6BQ5とは少し電気的特性が異なっていた。
私はこの6R-P15の音の方がデリケートに感じて好きだった。

真空管はアンプはその性能のほとんどが出力トランスに影響されるものの、アンプ全体のキャラクターには真空管個々の個性は表れる。

昔も、真空管アンプの自作が流行ったが、トランスは山水やLUXが自作マニアにとって憧れで、懐に余裕のある人はそれらを使った。

今日では、真空管アンプとトランジスタアンプの比較論はあまり意味がないと思っている。
それは、比較する土俵が違いすぎるからである。

もちろんこの話は、グレードの高いアンプでの話である。

真空管アンプが論じられるとき、そのパワーは数ワットからせいぜい50ワットどまりぐらいである。
真空管アンプで50Wというと、私は6GB8という真空管を思い出すが、この真空管は昔、学校の校内放送用によく使われていた。
パワーが出るということで使われていたのだが、音質そのものは観賞用には向いていない(と私は思う)。

211Aという真空管はプレート電圧を1000Vぐらいかける大がかりなもので、真空管の好きな人は使った人がいるようである。
かなりおおがかりになり、ヒーターのあかりで新聞が読めると聞いた。
しかし、ここまでやろうとすると、一般家庭ではあまり実用的とは言えない。
問題はやはり出力トランスである。
とてつもないトランスを使うことになる。

最近、6BQ5を使ったアンプを売り出している会社を見たが、パワーは1.5Wで、セットでスピーカーもつけて売ろうとしている広告もあった。
いくら、ドライブ能力はパワーだけではないと言っても、1.5Wで87dBのスピーカーを鳴らすという構想そのものが、いかにも箱庭的であり、部屋の空間を使ってゆったりとオーケストラを聴くという様にはなり得ないと思う。

学習机の上において、近い距離で聴くという感じならいいかも知れない。
それは、イヤースピーカーという感覚に近い。

真空管アンプを作っていたマニアもなんとか出力トランスの影響を廃したいと考え、OTLアンプに挑戦した記事が雑誌に紹介されていたことがある。

今日、数ワット程度のトランジスタアンプはそのほとんどが低価格路線の製品であり、同程度のパワーの真空管アンプとの比較では、真空管アンプ対トランジスタアンプという構図にはなり得ない。

私が実際試聴した感じでは真空管アンプは低域、高域が伸びきっていなくて苦しい。
トランスの特性の限界が現れているように思う。
周波数特性は概してかまぼこ型であり、こういうかまぼこ型の音が好きな人はいるようである。

グレードの高いトランジスタアンプは低域、高域ともストレスなく伸びきっている。
音源(ソース)そのものの素材をダイレクトに現す。
硬い音は硬く、柔らかい音は柔らかくである。

今日のトランジスタアンプでは2000W(1Ω)というパワーを出すものもあるが、これはAccuphaseのM-8000で亡くなった先代の春日社長は「静かな音を聴きたいから開発した」と言ってみえた。

オーディオ用の大出力アンプは、大音量で聴きたいというのではなく、静かに音楽を聴きたいからというのが、多くの経験をしてきた人の考えだと思う。

私もいつかこのAccuphaseのパワーアンプを使ってみたいと思うが、昨年640W(8Ω)のパワーアンプに換えたところ、ヴァイオリンなどの弦楽器の音がきれいになった。

特にアナログのレコードを再生した時、それまでとげとげしくささくれだった音に聞こえていたのが、きれいになったというより、その楽音でない弦をこするような雑音も忠実に余裕をもって再生することにより、耳障りでなくなったというのが実感である。

つまり、非常にするどいパルス状の信号により、アンプに余裕がないと、再生できないために他の音を汚してしまうような気がした。
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posted by dolce at 16:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | オーディオ
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