辻井さんのインタビューの一部を聴くと、普通のピアニストとして音楽を聴いてもらいたいと言っている。
もちろん、その気持ちもわかるような気がする。
辻井伸行/ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番ハ短調(1)
辻井伸行/ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番ハ短調(2)
CDも飛ぶように売れ、コンサートのチケットもまたたくまに完売したと聞く。
それもいいことだ。
辻井さんが、日本人として、日本人にインパクトを与えたことは大きい。
それで、私が期待したいのは、日本人がクラシック音楽を鑑賞する力を高めてほしいと思うことだ。
日本は経済大国と言われながら、時に有名画家の絵を買い漁ったことが批判されたことがある。
何を批判されたかというと、それは、当然、芸術を理解する心である。
「成金」という言葉があるが、私は日本が成金的であるように思えて仕方がない。
それは、芸術を理解する力に乏しく、自身でそのよさを理解する力がすくないのではないかと思うからである。
それは、芸術教育の貧困さにもあると思うが、経済だけを追って心を捨ててきたという生き方にも原因があるのではないか。
(霞ヶ関の人たちの楽しみが、意外に低俗なものであるということを知ってがっかりするとともに、日本人として恥ずかしい気がする)
マスコミに載らない芸術家でもすばらしい人はいると思う。
また、その逆もありだ。
マスコミ、その他の雑音に惑わされず、自分のいいと思ったものを大切にするという心がほしいと思う。
辻井さんを評価するのを、コンクールの優勝だけでなく、また、他人がすばらしいと思っているから、自分もすばらしいというのではなく、自分自身の心を率直に出す人が多くなって欲しいと思うのである。
辻井さん自身も、周りの関係者も「これから」つまりピアニストとしての出発点に立ったところと言っているように、優勝の栄光を人々が忘れたころに、他の世界的なピアニストたちと同列に評価される人となって欲しいと思う。
辻井さんは、今回、ドイツでの演奏会の予定があった。
そこでは、それまでにない緊張をしたしたということである。
それは、優勝したということのプレッシャーでなく、聴衆から受けるプレッシャーということだそうだ。
日本も、演奏家がよい意味でプレッシャーを感じる聴衆が多くなってほしいものだ。
演奏家は聴衆からプレッシャーを感じることで、よりよい演奏をするし、育つとも言えるからだ。
辻井伸行/リスト・ ラ カンパネラ



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