昔、各家庭にあったラジオはもっぱらニュースを聞くためのようなものであったが、昭和30年ころから、日本もそろそろ豊かになり始めたせいもあって、お金持ちの家では音楽の再生を目的とした、それまでより贅沢な再生機が登場するようになった。
通常のラジオとは違う迫力のある音に魅せられた人たちは、多かっただろう。
当時の家庭のラジオは真空管式で、出力は3W程度であった。
真空管の名前は、6Z-P1というST管が多くなった。
その後、真空管は小型化しMT管と呼ばれるものが出現した。
代表的な真空管は6A-R5だった。
ステレオ放送も当初はAM放送であった。
放送局2局が協力して、右チャンネル、左チャンネルを担当した。
NHKは第一と第二の2局を持っていたので、よかったが民放の場合は他局との協力関係が必要だった。
FM放送が始まると、1局で放送ができるようになったこと、音質が飛躍的に改善したことで、音楽番組は急速にFM放送に移行することになった。
オーディオはステレオ装置と呼ばれ、アンプも10Wぐらいのものが出現するようになった。
真空管としては、6BQ5のプッシュプルは贅沢なアンプであった。
それでも、低音を再生することはなかなか難しく、スピーカーの能率を高くしたり、エンクロージャー(スピーカーの箱)を大きくしたりして、低音の量感を稼ぐ方向でステレオ装置が作られていた。
こういう経緯もあったせいか、スピーカーは大きなものがよいというイメージがすっかりできあがってしまったようだ。
今日では、そういう昔のように、スピーカーは大きい方がいいというイメージが依然として続いている面があるようだ。
しかし、HIFIという意味からは、大きなスピーカーがHIFIであるとは言えない。
文字通りHIFIに迫ろうとするのなら、あくまで音は生に近いを目指すべきなので、本当にHIFIとは何かを求めてきたのが、トランジスタによる大出力アンプが登場するようになってからだと思う。



