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クラリネット:ジェルヴァーズ・ド・ペイエ/ペーター・マーク指揮 ロンドン交響楽団
DECCA POCL-90103
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クラリネット協奏曲イ長調K.622は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって、1791年に作曲された最後の協奏曲である。2006年英国クラシックFMのモーツァルトの人気曲第1位になったことからもわかるように、彼の全作品中最高傑作との評価もある。この曲は第三楽章からなる。
この曲の原曲として、1787年頃に作曲された『G管バセットホルンのための協奏曲 ト長調』KV584b(621b)があり、199小節までの断片が残っているが、『クラリネット協奏曲』第1楽章と曲の構造は完全に一致している。なお、この版では途中でA管のクラリネットに書き直されている。
当時のクラリネット奏者アントン・シュタードラーの為に作曲され、この曲は"秋色"と形容されるように感情的な旋律を特色とする。なお、自筆譜は現在紛失している。
この曲は元々バセット・クラリネットと呼ばれる、半音4つ分低い音が出せるよう音域が拡張された特殊な楽器のために作曲されたものである。現在の楽譜は1801年にブライトコプフ・ウント・ヘルテルにより出版された際に通常のBb管、A管クラリネットで演奏できるよう編曲されたものだということが、1967年に発見された、出版譜について触れた新聞の書評により判明した[1]。実際、現行版では主に低音域から高音域に駆け上る部分で、低音が出せるオリジナルの楽器でないと音楽的に不自然なフレーズが出てくる。現在では当時の編曲譜などを元に数種類の復元版が作成されており、1991年に復元されたバセット・クラリネットで奏した演奏も数点録音されている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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クラリネットは幸せな楽器だと言われるのも、この曲があるからとも言えるのだろう。
モーツァルトの作品の中でも、傑出したこの作品を演奏して録音に残している名手はたくさんいて、どのCD、レコードを選ぶのか悩むところだが、ここではド・ペイエの演奏によるものを推薦したい。
ド・ペイエはイギリスを代表する名手で、クラリネットのスケールの上下するところに比類ない美しさを持つ。
音色は独特の、(人によってはいぶし銀と言うが:おそらくブージー・アンド・ホークスのクラリネットと思われるが)魅力がある。
録音はLP時代のもので、CDにリミックスしたものであるが、レコードも復刻版があるのでできればそれも聴いてみたいものである。
第一楽章はAllegroで、かなり長いオーケストラの序章のあと、クラリネットが主題を奏する。

第二楽章はAdagioでクラリネットが美しい音色で歌い上げる。モーツアルトのクラリネット五重奏曲の第二楽章を連想させる。

第三楽章は再びAllegroで軽快なメロディーが流れる中で、モーツアルトの人生を感じさせるような暗い表情が顔を出す。

モーツアルトが晩年にクラリネットの名手、シュタードラーと出会ったことは、今日の我々にとって大変幸せなことだった。
クラリネットを吹いている人なら、必ず挑戦してみてほしい曲である。
なお、同CDに収録されているウェーバーのクラリネット協奏曲、1番、2番もド・ペイエのテクニックのすばらしさを表していて、聴き応えのある録音である。
