
私はまだ中学生で、工作好きから次第に電気関係の工作に好みが進んでいた頃で、いわゆる街の電気屋さんというのがあちこちにあって、ある電気屋さんの棚に、普通のラジオなどには使ってない外観をしたスピーカー(単体)に惹きつけられたのがこのPAX-20Aである。
やっとの思いで1個を手に入れ、しばらくはそれだけで聞いていた。
今まで聞いたことのない音に、この時オーディオの世界というものに突入したと思う。
この頃は、オーディオについてはアマチュアやマニアからメーカーの方が刺激を受けていた。
それが、やがてオーディオ全盛時代になって、メーカーは圧倒的な資本力で、それまでマニアがやっていた贅沢なシステムを商品化していった。
売れるか売れないかに関わらず、やってみたいと思うことは何でも商品にするというような時代だった。
そういう頃を知っている人は、メルコ(現在の社名はバッファロー)がターンテーブルだけで重量が50Kgもあるレコードプレーヤーを発売していたことを知っているだろう。
今はなくなってしまったマイクロという会社も、重量級のターンテーブルをコンプレッサーで浮かせて、さらにレコードを真空ポンプでターンテーブルに吸着するといったプレーヤーを発売していた。
オーディオ全盛のブームを作ったのは団塊の世代というような気がするが、そう思うのは、未だに高級オーディオを買っているのは、余裕のある団塊の世代ではないかと思うからだ。

フォステクスである。
この会社は昔はフォスターと言った。
工作の好きな私にとって、こういう会社が今も元気であるということは嬉しいことである。
さて、わたしはふとした機会から、フォステクスのFE-208ESというスピーカー(ユニット)を知った。
私の街には近くに、高級オーディオを売っている店が2軒あるが、そのうち一つで偶然見つけたスピーカーがFE-208ESである。
友人がオーディオに興味を持ち始め、オーディオ店に立ち寄ったとき、床に段ボールに入ったこのスピーカーを見て、友人が「こんなのはどう?」と言ったので、私は、まあ、入門にはいいかもと思い「いいじゃない」と言った。
友人は即座に買ってしまった。
買ったのはいいが、エンクロージャーが必要なので、そこまでめんどうをみることになった。
友人は金持ちなので、指定箱を専門業者に注文して作らせた。
やがて、エンクロージャーが来たというので、私は友人の家に出かけた。

玄関においてあった箱は想像以上に大きく、二人で運ぼうと思っても持ち上がらなかった。
引きずるようにして部屋に持ち込み、私がスピーカーを取り付けた。
入門という程度に思っていたこのスピーカーから、驚くべき音が出てきた。

パワーは15W程度だったと思うが、とてもエネルギッシュな音が出てきて、一番よいのは何と言ってもユニット単体の自然さである。
アナログプレーヤーはノッテインガムでカートリッジはオルトフォンのコントラプンクトBだった。
私はこのスピーカーが欲しいと思い、調べてみたら、なんとフォステクスの限定300個発売というもので、すでに完売されていた。
だが、まだ店には残っているかも知れないと思い問い合わせたら、運良く2個残っていたので即座に買うことにした。

完成した写真を見るとわかるが、このスピーカーの取り付けには真鍮のリングが用意されていた。
使わなくても取り付けられるのだが、スピード感が増すなどと書かれていたので、安くはなかったがこれも買ってストックしてある。
時間と金銭的な余裕ができたら、私もぜひこのスピーカーをエンクロージャーに入れて聞いてみたいと思う。
■規格
インピーダンス 8Ω
最低共振周波数 40Hz
再生周波数帯域 f0〜13KHz
出力音圧レベル 99dB/W(1m)
入力 100W(Mus)
M0 15g
Q0 0.1
実効振動半径 8.1cm
マグネット重量 3.64Kg
総重量 10.5Kg
スピーカー単体としてはかなり重い。
演奏会場の雰囲気が自然に伝わってくる。
能率が非常に高いので、アンプのパワーがいらない。
(真空管アンプに適していると思う)
