
その彼の著書クラシックの魔法 スピリチュアル名曲論
クラシックフアンはもとより、クラシックを敬遠している人も、ぜひ読んでおくとよいと思う。
書き方が単刀直入で、もってまわったところがないので、もっとも核となるところ、著者の言いたいことがすぐにわかる。
これほど、明快に言えるのは、著者の学識、音楽経験、才能が高いからだと思う。
だからと言って、そのレベルの高さを誇示しているわけではない。
読んでいて、素直に受け入れられる。
私はクラシックを聴くことも多いし、演奏することも多いが、それはともすると他人からは「あいつはクラシックの人間」というレッテルを貼られやすい。
しかし、私としては全くそういう意識はない。
ジャズもポピュラーも歌謡曲も聴くし演奏することもある。
そういったクラシック以外の分野の演奏から学ぶところも多い。
しかし、音楽の土台はクラシックであり、その土台を作った人はヨハン・セバスチャン・バッハであるということは、音楽に携わってきて感じてきた。

バッハは小川ではなく大河である
はBACHがドイツ語では小川の意味になることから、誰かが言ったのだろうが、うまく表現したものだ。
著書では始めに、モーツァルトのクラリネット五重奏曲 イ長調 K.581が登場するが、この曲のことを「完璧な曲というのはこういう曲のことを言うのだろう。無駄な音符がひとつもない」と言った人がいる。
著者は、モーツァルトが作曲したというより、神がモーツァルトを選んだというような表現をしている。
私はクラリネットを演奏するが、このような曲が存在するということは誠に幸せなことだと思う。



