しかし、ピアノ協奏曲の傑作はこれだけでなく、他にも取り上げなければ片手落ちという感じがする。
今回とりあげたのは、チャイコフスキーピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調で、これはもうクラシックフアンおなじみの曲である。
初めて聴いたのは、高校生の頃だったと思う。
ドイツグラモフォン直輸入のレコードで、通常のレコード販売では、ジャケットからレコードを取り出せてしまうのだが、このレコードは密封してあって取り出すことはできなくなっていた。
商品であるからには、それであたりまえとも思うのだが。
レコードを買ってきて、自分で製作した貧弱なオーディオで聴いたのだが、その貧弱なオーディオでもドイツグラモフォンの直輸入盤は国内版とは明瞭に音の違いがわかった。
国内版は通常音が軽く、ピアノがアプライトのように聞こえてしまうものが多いが、直輸入盤はピアノの音の重量感が感じられる録音だった。
また、演奏がリヒテル/カラヤンでこの両雄の対決はどうなるかというのも興味があった。
アンサンブルでもそうだが、名演奏家の集まりが意外によくないというのが、しばしばクラシックフアンの話題になっていた。

実際、そういう思いでレコードをかけたのだが、演奏は両横綱がっぷり四つで互いにひくところなく火花を散らすような演奏だった。
だが、そういう演奏が喧嘩にならずすばらしい盛り上がりを見せ、わくわくする演奏を展開していた。
そういうわけで、このレコードは何度も聴いた。
この演奏を聴いていると、気持ちがスカッとしてストレスが解消される。
チャイコフスキーは、この曲を作曲した時、当時、師と仰いでいた著名なピアニスト、ニコライ・ルービンシュタインのところへ持って行ったところ「こんな曲、ピアノで弾けない」とバカにされ、チャイコフスキーは怒って楽譜を持ち帰ったという話も、このころ知った。
そのぐらい、ピアノ曲としては難曲なのだが、今ではごく当たり前のように演奏され、聴く方も当たり前のように聴いているのは時代の違いだろうか。
若干12歳のキーシンがカラヤンと共演したのにも驚いたのだが。
そういう思い出を引きずりながら、現在のCD発売はと調べてみると、やはりこのリヒテル/カラヤン/ウィーン交響楽団は名盤の誉れが高いらしい。
